食と健康の話題
イチョウ葉エキスの話
生きた化石:イチョウの奇跡
技術士(農業)星野 正美/平成12年11月20日
イチョウの起源は二億八千年までさかのぼります。恐竜が栄えたその時代に、イチョウの祖先である植物ギンコ族は繁栄し、化石となって残っております。イチョウは唯一その時代の生き残りとみられていますが、イチョウの木は野生のものは絶滅し、現在あるのは人間が栽培しているものだけです。
葉は扇形で一般的に中央にV字形の切込みを持ち、シダにいくらか類似していますが、顕花植物には見られません。進化的にはシダ類と顕花植物の間に位置するとの見方があります。イチョウには雌雄の木があります。
雄花は自由に泳げる生殖細胞(精子)をつくります。シダ類とソテツも同様の特徴をもっています。
雌の木は受精すると対の胚珠を生み、これは成長してスモモに似た2〜3センチほどの黄色の種子になります。種子は肉質の覆いに包まれていて、熟すといやな匂いになります。
[イチョウ葉の効用]
上述で説明のイチョウの木は、皆さんは街路樹などでお目にかかり、銀杏は茶碗蒸などでお馴染みでしょう。イチョウの木の生命力は強く、その寿命は千年にもなります。それだけでなく、イチョウの葉にはイチョウにしかない奇跡のような治療効果を持つ成分が含まれているのです。
多くの植物性の治療薬のなかで、イチョウ葉のエキスは最も重要なものといえます。加齢に伴い記憶障害やいわゆる“ぼけ”と呼ばれる症状の原因である脳細胞への血流の悪化に対して、イチョウの若葉に含まれる物質が効果的だと言われています。
その効果と安全性については、1950年代〜今日までに400を超える研究論文が医学雑誌に発表されています。ドイツとフランスでは、イチョウの葉エキスは、普通の痴呆とアルツハイマー病をふくむ加齢に関連した精神能力不全の治療に広く処方されています。それというのも、この症状に対してイチョウ葉以上に安全で有効な化学的医薬が今のところないからです。
チョウの葉エキスは第一に、強力な抗酸化作用を持っています。その作用によって細胞を損傷から守り、脳細胞の機能不全を含むすべての全身的な崩壊の素因を減らす働きをします。イチョウの葉エキスに含まれている薬理学的活性をもった物質の主体は、ギンコライドというイチョウの若木の葉と根にしか存在しない物質で、多種類のフラボノイド類が(そのいくつかは独特の形で糖類と結びついているので、ギンコ・フラボン配糖体ともギンコ・ヘテロサイドとも呼ばれる)一緒に働いて相乗効果をもたらすと考えられています。ギンコライドの働きの1つはパフ(PAF)と略称される血小板活性化因子(plateletactivating factor)を抑制する作用なので、血小板の凝集を抑えて血液の粘度を下げ、血餅ができないようにし、危険な血栓のリスクを減らし、血管壁への斑の形成も減らす方向に作用します。これが脳細胞への血流を改善する直接の理由と考えられます。また、最近の研究ではイチョウの葉エキスには炎症を抑える働きもある事が確かめられていて、痛んだ動脈を保護して、それ以上のダメージが生じないように作用すると言われています。
イチョウ葉エキスの摂取に関しては、軽度の記憶障害の徴候に対して、1日当たりトータルで120mgを、3回に分けて摂るのが良いとされている。脳に対する効果は摂取してからすぐに現われ、ひとによっては1時間後に現われると言います。記憶の改善などに対しては、摂取してから、通常4週間から6週間で効果が現われるとされています。
[警告!]
ただし、イチョウ葉エキスは血液の粘度を下げ、血流を増加させるため、抗凝固薬の投与を受けている人、高血圧がつづいている人、頭蓋内出血の病歴のある人、出血性の障害をもった人の場合は、多量に摂ると重大な障害がでることも考えられます。その場合は医師の監督下で摂取するようにしなくてはなりません。また、記憶障害や痴呆には別の原因も考えられるため、症状が明らかにみられる人は、加齢に伴うものと決めてかからずに医師の診断を受けるようにして下さい。
「ギンコライド」化学構造式
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