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食と健康の話題
コレステロールの話 その2
動物脂肪を食べても血清コレステロール値を上げない方法
From Dr.Y.I/平成7年6月23日
アフリカ大地溝帯の東、現在のケニア南部からタンザニア北部にかけてはマサイランドと呼ばれ、多くのマサイ族が住んでいる。近年彼らは学問的に困った存在として有名になった。それはかれらが大量のコレステロールと動物性脂肪を摂取しているにも関らず血清コレステロール値が低いという、栄養学的常識にあてはまらない例外であることが明らかにされたからである。大量の動物性脂肪を摂っても血清コレステロール値が上がらないということがあるのだろうか。
マサイ族は牛と共に暮らす遊牧民である。かれらは牛に依存した生活をし、ミルクを主食、と言うより通常はほとんどミルクのみの食事をしている。大乾季(9月頃)にはミルクの出が悪くなる。このような時には牛の静脈から血を抜き取りミルクに混ぜて飲む。このほか、たまに山羊、羊、牛を食べることがある。
ミルクはキブユと呼ばれる細長い瓢箪に直接しぼり入れられる。このミルクはフレッシュな状態でも口にされるが、多くは自然発酵し、ヨーグルトになる。キブユは予め牛の尿で洗った後、木片で燻すのでかれらのヨーグルトはスモークチーズのような香りがする。かれらはこのヨーグルトを1日2〜3
リットル飲むようだ。
さて、このミルク、通常我々が飲んでいるミルクと違い、相当濃厚である。脂肪分は通常のミルクの約二倍、7〜8%もあり、コレステロールも通常の1.5倍程度含まれている。かれらは一日に500〜1000mg程度のコレステロールと100g以上の動物性脂肪を摂取していることになる。日本人のコレステロール、および動物性脂肪摂取の二倍以上である。ところが、かれらの血清コレステロール値は135mg/dlと低いことがWHO(世界保健機関)の調査で明らかにされている。
ではなぜ、かれらの血清コレステロール値は低いのだろうか。ひとつはかれらが遺伝的に血清コレステロール値が上がり難いということが考えられる。しかし、ナイロビ等で都市型の生活に馴染んでしまったマサイ族の血清コレステロール値は低くないという。従って、遺伝的素因はあるとしても、それだけでは説明できない。
かれらの生活スタイルも良い影響を与えていると考えられる。彼らは非常によく歩く。つまり、持続型運動をしているし、さらに大自然の中で、悠然とストレスの少ない生活をし、タバコもほとんど吸わないからだ。
しかし、かれらの血清コレステロール値が低い最大の要因は彼らの摂取エネルギーが非常に低いことにあると考えられる。エネルギー摂取を制限すればコレステロール値が下がることはよく知られている。ビタミンCを除けばほとんど完全栄養食といえるミルクを主食とすることで余分なエネルギーを取ることなく必要な栄養素を確保することができる。実際、かれらはみなスリムで腹の出たマサイ族など一人もいない。確かに、かれらのコレステロールおよび動物性脂肪の摂取量は多いかもしれない。しかし、かれらは生活していく上で必要最小限のエネルギーと栄養素を牛から分けて貰っているに過ぎない。
つい最近、エボラ出血熱が話題になった。アフリカではまだまだ恐ろしい病気が数多くある。マラリア、コレラ、アメーバー赤痢等の感染症もある。マサイの人たちはボーマと呼ばれる牛の糞でできた家に住み、上下水道もないところで暮らしている。衛生環境は恵まれているとは言えない。しかし、このような環境の中でマサイの人たちはアメーバー赤痢に感染しない。かれらはほとんどミルクのみの生活をしているために慢性的に鉄が不足し、軽い貧血状態にある。アメーバー赤痢菌は生育に鉄が必須である。かれらは慢性的鉄不足のため、腸管内の鉄濃度が低く、アメーバー赤痢菌が繁殖できないという。また、かれらの飲んでいるヨーグルトの乳酸菌は大腸菌や黄色ブドウ球菌等の病原菌の生育を強く抑制することも明らかにされた。かれらの伝統的な、そして生活していく上で必要最小限の食事が厳しい環境の中で、かれらを恐ろしい感染症から守っている訳だ。
さらにかれらの多くは鎌形赤血球という遺伝性疾患の素因を保有している。通常は溶血性貧血などを引き起こす厄介な遺伝病であるが、この素因のあるものはマラリアに感染しないことが知られている。かれらはこの素因を保有することで、マラリアによる死から逃れることができるのである。
まさにかれらは厳しい環境の中でぎりぎりの適応をして生活しているのである。決して楽な環境で動物性脂肪を多く含む食品を鱈腹食べて、血清コレステロール値を低く保っているわけではない。
数年前、ニューヨークタイムズに "THE
POISONING OF AMERICA!"と題する全面広告が掲載された。この広告では多くのアメリカ人が飽和脂肪酸(動物性脂肪)の過剰摂取により、血清コレステロール値が高く、これがもとで毎年50万人もの心臓病による死者をだしていることを指摘している。さらにマクドナルドのハンバーガーにはあまりにも多量の動物性脂肪が含まれているとも警告した(ラージハンバーガーとポテトで25gもの飽和脂肪酸を含む)。
もし、血清コレステロール値を正常に保ち、健康を維持したいなら、しばしばマクドナルドにかぶりつくような食習慣を改めるか、マサイ族になるかのどちらかを選択すべきである。
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