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水の選び方&使い方上

どう使う、どうすすめる 飲みたい水<上>

技術士(農業)星野 正美

含有成分で自在に変身する水。だからこそ、用途はさまざま

 ミネラルウォーターとしての水はすっかり商品として定着し、かなり多種類の商品が 出回っている。しかしあなたはどれだけの知識をもって、この沢山のなかから適切な 水を選び、使いこなしているだろうか。選び、使いこなしたい人のために以前私がミネラル ウォーターのバイヤーさん向けに書いて、フードビジネス誌に載せた記事をここに転載する。 <上>では水の選び方を、<下>では使い方について述べる。

 水とはどういうものか。水の研究はまだ途上で未知の部分も多いが、これを理解しているかどうかで水の選び方は変わってくるので、まずはその構造を理解したい。水は分子式H2Oと表すように、水素原子Hが2個と、酸素原子Oが1個でできている。だが、水の分子結合は特殊で、液体状の水はこの状態では存在しない。
 図1(下図参照)は、上の説明のとおり、水分子が互いに引きあって結合している状態。これを水素結合というが、この結合により、水分子は平均5個単位で磁石のようにくっついたり離れたりして存在する。非常に不安定な結合で、加熱などの処理を加えれば、性質もまた変わってくるのだ。
 図2(下図参照)は、水分子が籠状にミネラル物質を囲っている状態を示している。高山から長い歳月をかけて自然湧水する水には、圧力が加わっている。このことによって、図2の籠状の構造ができ、よくいわれる水の機能性は、この特殊な構造により発揮されると考えられる。つまり、単純に「溶けている」状態とは違い、たとえば水道水にミネラルを溶かしても、本当のミネラルウォーターができるわけではない。水はその含有成分の性質によってももちろんのこと、その分子構造のあり方によっても性質が変化する。
 この変貌性が水のおもしろいところなのだ。したがって、水の使い分けは本来、もっと考えられてもいいはずだ。
 こうして存在する自然の水のもっともわかりやすい使い分け方は、硬度による分類。ミネラルウォーターは、日本では最近ようやく認知されつつある商品。依然トライアルユースも多く、特定のブランドを決めかねている消費者が多いだろう。だか用途といえば、炊飯から料理、水割り、飲用までと、まさに何でもござれといった幅広い用途をすすめているものが多く、各商品のラベルを見ても、消費者にはあまり参考にならない。しかし先にも述べたように、水は千変万化。その変化をもっとも端的に伝える硬度の記載さえ、されていないものが多いのはどうだろうか。  あくまで特定水源の水を商品として売るのだから、イメージ先行でなく、商品の品質そのものと、それに適したアピールで、ミネラルウォーターを提供してもらえればと思うことこのうえない。

図1 水H2Oの水素結合の模式図
図2 カルシウムを取り囲んだ水の模式図
 酸素原子Oは電気陰性度が大きいので、結合している水素原子Hの電子を引き寄せる。電子が少なくなってプラスになった水素原子Hは、近くの水分子を引き寄せて結合する。そのため、水は平均5個単位で離合をくり返しながら存在する。  水素結合により、いくつもの水分子が籠状に結合してカルシウムCaなどの物質を閉じ込めている状態。図では、酸素原子Oをつないでいる黒線上で各水素原子が結合している。この籠の中の物質の性質とその構造が、水そのものの性質にも影響する。


水の品質とは

 では、消費者を代表して商品を選択するバイヤーは、どうやってミネラルウォーターを選べばいいだろう。日本ではネラルウォーターは殺菌が義務づけられているので、商品として有害なものは当然ない。だが、源水の状態ではどんな水なのか、これがポイントだ。ミネラルウォーターが商品として認可を受けるには、約25項目ある水道水の水質基準を満たさなくてはならない。まずは各社から、このデータを入手して検討してみよう。以下に、分かりやすい項目をあげてみると−
 硝酸性窒素および亜硝酸性窒素、過マンガン酸カリ消費量は、水中の菌の栄養になるので、不要な菌が生育する可能性がある。商品としては、基準値よりはるかに少ない方がいい。
 銅、鉄、マンガン、亜鉛などは微量ミネラルと呼ばれ、体には必要だが、水の味を悪くする。六価クロム、カドミウム、鉛、ヒ素、フッ素など体に有害な成分は、各基準値よりもはるかに低い方がいい。
 色度・濁度も、なるべく低い方がいい。また、近年は工場排水などによる環境汚染も心配されるので、平地に水源がある場合は特に、トリハロメタン、トリクロル・エチレン、パークロル・エチレン、LASなど(精密機械の洗浄、ドライ・クリーニング、合成洗剤などに使われ、人体に有害)の検査も年に数回は必要と思われる。
 以上のことだけでも随分と水を選別することができる。しかしさらには、可能な限り、水源の視察に行くこともすすめる。
 井戸からの採水ならば、深いほど有害成分混入の可能性は低い。もっとも好ましいのは、自然噴出している水を、空気に触れず、じかに採水すること。白然噴出とは高い山脈からの浸透水の圧力が地下水にかかっていて、その圧力で水が湧出すること。岩板内部から強い圧力がかかっているので、外部から他物質が混入しにくいのだ。そういう意味では、一概にはいえないが、万が一にでも周辺の環境汚染が起きることを考えれば、ポンプアップ方式は、徐々に他成分や有害成分が浸み込んでくることも考えられるので、水質検査の頻度は多い方がいいだろう。
 殺菌法に関しては、日本では1986年までは加熱処理以外は認められていなかったせいもあり、今でもほとんどの商品が加熱処理されている。ところが、加熱殺菌は水にとって好ましくない。なぜなら、加熱などの大きいエネルギーが加わると、先述の水の結合が破壊されてしまい、源水の成分が変わってしまうからだ。しかも、適度に含まれていると水がおいしくなる炭酸ガスも抜けてしまう。設備投資がかかるのは痛いだろうが、早急にフィルター除菌などの方法に切り換えるべきだろう。特に、ミネラル分が多いのがウリの高硬度の水を加熱処理するのは問題だ。
 とにかく一度、何種類かの商品を飲み比べてみれば分かると思うが、硬度や含有成分によって、各商品の風味は驚くほどに違うのだ。味は個人の主観によるから、本稿で各商品の味に対してどうこう評価はできない。だが最低限、ひとに提供する商品として、それだけの価値をもったものを販売する責任があるということは忘れてないでほしい。それが、ミネラルウォーター業界に対する率直な希望だ。
 次回〈下〉では、「用途別水の選び方」について、より詳しくまとめてみよう。

参考文献: 岩元睦夫著「食品と開発」VOL26 No.7

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