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炭そ菌の話

炭疽菌(Bacillus anthracis)の微生物学的な話

技術士(農業)星野 正美

 最近騒がれている炭疽菌は当社HPで掲載している"細菌による食中毒"にでてくるセレウス菌の仲間である。炭疽菌による炭疽病は古くから知られている病気で、草食動物、特に牛や羊が主にかかる。人間も、病気にかかった動物に触れて傷口から菌が入ったり、その動物を食べたりして多量の菌を摂取すると感染することがある。
膚の傷口から菌が侵入する場合は比較的少ない菌で感染するので、いままで報告のあった自然界での人間の感染はほとんどこの皮膚感染である。虫に噛まれたような赤色の腫れが出てやがてそれの周りに水疱ができる。中心部の腫れは崩れて血が滲み黒くなる。炭は黒い状態を、疽は悪性の腫れ物をいう。
山の菌を食べたり飲んだりしてかかる場合は、まず喉の粘膜で菌が増える場合と、腸まで言ってそこで増える場合がある。それぞれ症状が違うが(症状については国立伝染病研究所のHPに載っている)最終的には粘膜を通して血液中に入って増殖するから血が壊れ、おまけに菌の作る毒素が全身に回って、つまり敗血症になるようだ。
に呼吸で吸い込んだ場合だが今回のアメリカで起こった事件で重症な患者は吸い込んで肺炭疽になったと報道されている。始めは風をひいて喉の調子が悪いとか熱がでるとか、比較的軽い症状がでて、その内呼吸困難、ショック状態、敗血症などが急激に起こり、こうなると抗生物質やその他の治療を施しても助からないとされている。この菌はほとんどの報道や文献で好気性菌(分類学的に空気(酸素)がないと生育できない菌のこと)と記述されているがこれは正しくないと思う。分類学のバイブルともいえるBergey's Manual eighth editionには空気があってもなくても増殖できる(通性嫌気性菌と言う)として記載されている。さらに炭疽菌と極めて近い関係にあるBacillus cereus (セレウス菌)が空気のない状態で生育する(嫌気的生育)ことを我々の研究室でも確認している。そしてこのセレウス菌が、嫌気的生育では紐のように長くなり胞子を作らないが、好気的、つまり空気のある状態では酸素を利用して猛烈に増殖し、熱や薬剤に強い胞子になることも確認している。炭疽菌もこのような性質をもっているとすれば肺炭疽の危険性が次のように推測される。肺の中では空気があり猛烈に増殖が可能であり、菌体内で胞子をつくったあと菌体は不要になり溶かされるので菌体内部の毒素が急激に放出される。
の菌は細菌としては大きくてさらに自分を守る膜、莢膜(きょうまく)というものを作って自分を覆っている。この菌の莢膜は特殊で、ほとんどD―グルタミン酸というアミノ酸がつながった高分子でできている。このような菌が空気中に漂う(浮遊するという)ようなことは少ないと思われ、どの調査をみても自然界で肺炭疽が発生したことは極めてすくないと記述してあり、ほとんど記録がなかったのではないかと思われる。
従って肺炭疽になるほど吸い込むには、非常に空中に浮遊しやすい粒子に加工した生物兵器であると考えられている。
炭疽菌と微生物学的に極めて近い菌は次の通りである。
ここれらの菌はグラム陽性(下記注参照)の桿菌である。細胞内に胞子をつくり、胞子の部分は膨れたりしない。胞子の位置はほぼ中央である。いずれも普通の細菌からすると大型で,幅は 1.0 〜 1.5 マイクロメーター、長さは 2 〜 5 マイクロメーターと上述の分類の本に記載されている。

Bacillus anthracis 炭疽菌、この菌だけ泳がない(運動性がない)。
さらに増殖にはVitamin B1 と多量のアミノ酸を必要とする点がセレウス菌と異なる。
Bacillus cereus セレウス菌細菌による食中毒をご覧下さい。
Bacillus thuringiensis BT菌、有名な微生物農薬として虫を殺す菌。
Bacillus megaterium 好気的にしか生育できないなど他の3種と違うが分類学的には近くにある。なかでも一番大きい。

 炭疽病は細菌学の父と言われるかの有名なドイツのコッホが、病気にかかった動物から病原体である微生物を分離し、培養して注射すると、同じ病気にかかることを実験で証明した病気である。100年以上昔に、それまで何かの祟りか、悪魔の仕業と思われていた伝染病が、病原微生物が原因で起こることを初めて証明した。微生物学的に記念碑的なできごとなのである。

<注:グラム染色>
 調べる菌をガラス板片の表面に塗布して、軽く熱乾燥してしっかり付着させ、塩基性色素溶液(主にクリスタルバイオレットを使用する)をかけて染めた後、ヨード液をかけて色素ヨード複合物を形成させる。次にアルコールで洗って、脱色できるものをグラム陰性、出来ずに色素が染まったまま残るものをグラム陽性として細菌を二群に分ける微生物分類の手法。細胞壁の状態の違いでこのような違いが生じるといわれている。炭疽菌やその仲間は陽性であるが大腸菌群などは陰性である。
当社保有セレウス菌
嫌気培養1日でひも状になったもの。
当社保有セレウス菌
好気培養2日で胞子になったもの。



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